Entrance Part2

心を解き放て

本を読まない人は、本当に一冊も読まないみたいだ

この記事をシェアする

最近、バス停でバスを待っている時、中学の頃の友人に再開した。

 

「久しぶり」

「おお、久しぶりだね」

 

「最近結構きつくてさ」

「受験勉強?そろそろ本腰いれなきゃね」

 

「いや、就職先のことなんだけど」

 

おっと、違った。

そっか、工業高校に進んだら、みんな就職先決めるのか。

 

そんなことに驚いていたら、バスが来た。

 

 

バスの中は、静かだった。

時間帯は、いわゆる帰宅ラッシュ時の、少し前。

人はあまり乗っていない。

 

小声で会話を続ける。

 

 

向こうから振られたのか、あるいはこちらから振ったのか、

もしくは僕がその瞬間本を手に持っていて、それについて尋ねられたのか、

 

経緯は覚えていないけれど、本の話になった。

 

僕は本が好きだ。

1週間に3冊ほど、読書をするし、暇な日は、一日数冊読んだりする。

 

本が好き。子供の頃からずっとそうだった。

いや、子供の頃に決定づけられた、と言ってもいいかもしれない。

 

小さな頃、祖父母はいつも本を買い与えてくれた。

買ってほしい、とねだると褒められた。

 

事実、祖父母に古本屋に連れてってもらうのが大好きだったし、古本屋なら何時間でも過ごせた。

けれど、褒められたいがために、本を買ってもらう自分もいたと思う。

 

 

友人、工業科に進んだ彼は、本を読んだことがないと言った。

 

「そんなはずはない」

 

読書という趣味がなくても、小学生・中学生の頃に設けられた「読書タイム」のような時間に、ページをめくる経験はしただろう。

 

絵本を読み聞かせてもらうことが読書か否かは知らないが、幼少期にだって冒険物などの絵本や小説はきっと読んでるよ、と。

 

「確かに。だけど、もう自ら本は購入しないし、久しく本に触っていない」

 

ここでふと、どうしても本を薦めたい欲求に駆られた。

いきなり純文学はもちろん怠いだろうし、本格派のミステリだってダメだろう。

ここは。

 

「ライトノベルなんかは?読んでみない?」

 

「何それ」

 

知らなかった。

嘘だろ、と驚きつつ、一連の会話の中で気になったことがあったので聞いてみた。

 

「マンガは?最近、亜人ってのが面白くてさ、貸すよ?」

 

「マンガね〜、小学校以来読んでないな」

 

衝撃的すぎる告白に、呆気にとられてしまった。

しばらく呆然とする。

 

二の句が告げられなくなった僕に、彼は言った。

 

「家にあるのは、小学校の時に古本屋で買ったドラベースくらい。

そのほかに読んだことないよ。」

 

詳しく話を聞いてみると、マンガのコマを読むのでさえ苦痛らしい。

 

「マンガを1冊読むのでさえ、きっと1時間はかかると思う」

 

だから、時間が惜しいことを理由に読んでないのだろうか。

 

僕のしたことは、まず、コミックスのあらすじ・魅力の紹介。

 

近年発見された新生物「亜人」は、不死身の生物なの。死んでみて、初めてわかる。

でも、「不死身である」点をのぞいて、ほぼ人間と同じ。読み進めるとわかる真実もあるんだけど。

それで、ある日主人公が亜人であると発覚してしまうの。

政府は希少な危険生物として、主人公を追っかける。

日常を失った主人公の、逃亡サスペンスだよ。

ストーリー展開が速くて、きっと退屈しないはず。

まるで、映画をみているように、ハラハラドキドキ、あっという間に読めるよ。

 

バスに揺られながら、簡潔に、本当に簡潔に伝えた。

 

 

同じバス停で降りた。

 

「面白そう。時間かかるかもしれないけど、読んでみるよ」

 

彼にマンガを貸すためだ。

 

 

 

はてなには読書好きが多すぎて、「本を読まない」人種のことをあまり知らないと思うから、簡単に書いた。

 

彼は決して貧しい家庭ではなかったと記憶している。

確か中学の頃は、僕の小遣いの2、3倍はもらっていたはずだから。

 

だからと言って、決して金持ちのオーラを放つわけでもない、運動が得意な子だった。

 

どうして、本を全く読んでいないのかは分からないけれど、

読書って案外エネエルギーを使うものだし、誰かがきっかけを与えてやらないと取りかかれないものなのかもしれないと思った。

 

現に僕は恵まれて、読書好きとなっているわけであり、

彼は、マンガのコマを読むのでさえ苦痛と言っている。

 

後日談になるけれど、僕の貸したコミックスをめちゃくちゃ楽しんでもらえたみたいだ。

 

彼は、マンガを楽しめるようになった。

自分の好きな作品が、他人に、ましてや普段マンガを読まない人間に認めてもらえるのは、この上ない幸せである。

 

「読書をしなければ、実りある人生は歩めない」

とは言わないけれど、今度はまた別の誰かにきっかけを与えてもらって、

読書を好きになり、人生がより輝いてくれればいいと思う。

 

終わり

 

▼マンガも面白いし、映画も面白そうだし(9月30日公開)、ぜひぜひ