朝起きると名古屋では初雪が降っていて、心が踊る。これを書き出したのは12月29日のことで、年の瀬ギリギリの合図みたいなものかなと思ってます。2018年ももう終わりらしいのでこういう記事を書いてみたかったのです。
僕が2018年に読んだ本の中から、読んでよかったと思えた本を6冊紹介。
2018年ベストブック
ハッピーエンドは欲しくない
あのときとは決定的に違うことがあった。それは、今回は自分が望んでこうなったのだということ。流されるまま生きてきた僕が、初めて自分の人生に対して主導権を得た。それだけが決定的に違っていた。それだけで十分だった。足の震えは、これからの旅路への、期待に対する震えなのだった。
n『ハッピーエンドは欲しくない』Kindle版 位置No: 1,648
増田(はてなアノニマスダイアリー)から発掘された本。詳しいことは調べてもらいたいのだけど、この辺りを書かれた方がセルフパブリッシングで出版されたみたい。
- 「"Hello world!"」-はてな匿名ダイアリー
- 「HTTP/1.1 200 OK 」-Qiita
- 「惑星を動かすプログラム 」-Qiita
- 「人生に物語は要らない」-はてな匿名ダイアリー
めちゃくちゃ楽しい本。読む手が止まらない。それであるのに筆者にしか書けないような鋭い知見が散りばめられていて、ものすごく学びがある。たとえば主人公のバックれ癖はこちらがヒヤヒヤするようなもので、それだけでエンターテイメントだった。だってそうでしょう?そういう話は案外ありふれていても、みんながみんなできるわけじゃない。僕にとっちゃすごく非日常的で、そのリアリティーに心が躍ってしまうのだ。
海外放浪編(勝手に名前つけた)に至っては社会のありようを考えるヒントみたいなものをものすごくプリミティブに拾っていくさまが鮮やかに描かれていて、すげーと感心してばかりだった。
みんなちがって、みんなダメ
ダメなのは、何も知らないことではなく、知るべきことを知らないことです。知るべきことを知らない者をバカと言います。知るべきことを知らない者はどんなに物知りでも高学歴でもバカであり、知るべきことさえ知っている者は誰でもたとえ他に何一つ知らなくとも賢者です。
中田考『みんなちがって、みんなダメ』Kindle版 位置No: 20
〜だからバカ。〜だからダメ。がマシンガンのように連呼される本。一見主張に厚みがない、ただの暴言のように感じる箇所も、逆説的なアドバイスになっていたりする。単純に読み物として面白い。僕の知らなかったイスラームのことが書いてあるし、宗教的なアプローチからイデオロギーの正体なんかにも触れられていて、読んでいてなんとなく、上の『ハッピーエンドは欲しくない』に通づるものを感じた気がした。それはまあメモを取っていなかったので忘れたけれど、読む価値はあると思う。
ポラーノの広場
あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
宮沢賢治『ポラーノの広場』Kindle版 位置No: 12
Macのフォントブックでサンプルになってるあの文章、なんとなく知っているつもりでいたけれどタイトルさえ知らなかったという。しかも書き出しかと思ったらそうでもない。感想を書くのは難しいんだけど、文章がすごく幻想的だった。あのイーハトーヴォのすきとおった風〜の美しさ。僕はいつのまにか暗唱できるようになっていて、ときどきお風呂なんかで口ずさむ。それってものすごくすごいことなんじゃないか。
春と盆暗
…モヤモヤした時は 月面を思い浮かべて そこに思いっきり 道路標識を放り投げるんです
熊倉献『春と盆暗』Kindle版 位置No: 14
個人的に2018に読んだ漫画でナンバーワンの作品。ただし、好みはものすごく別れると思う。いわゆるボーイミーツガールを枠組みとして構えているけれど、そのストーリーにちょっとしたひねりが加えられていて、全ては空想の世界に落とし込まれてる。突拍子もなく繰り広げられる会話劇に、ふわふわしていてどこかつかみどころのないイラスト。これ、何度読んでも毎回違った楽しみ方ができるスルメ作品な気がしてる。
ゆるキャン△
野クルへようこそー
あfろ『ゆるキャン△』 1巻 Kindle版 位置No: 51
何も考えずに読める。一巻を読んだ後、二巻以降を読まなくても別に続きは気にならないし、読んだら少し幸せになれる。絶妙なポジションの漫画。疲れているならこれです。
走ることについて語るときに僕の語ること
Pain is inevitable. Suffering is optional. それが彼のマントラだった。正確なニュアンスは日本語に訳しにくいのだが、あえてごく簡単に訳せば、「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」ということになる。
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』 Kindle版 位置No: 30
今年読んだ本で一番印象に残っている本。 これまでたくさんのエッセイに出会ってきたけど、この本以上に自分を走らせるものは現状存在していない。この本は、ランニングの指南書でなければ健康法が書かれている訳でもないのだけど、それでも読者を走らせる。本書の楽しさ。それは、日本各地をはじめ、ハワイ、ケンブリッジ、ニューヨーク、各地で村上春樹が走り過ぎてきた情景や、「一人の小説家として1日10キロメートルも走る訳」を覗くことに尽きるといえよう。
すべての走る人の、至高のバイブルになり得るエッセイです。
という感じでした
2018年、どんな年だったかと言われるとひたすら情けない年というか、逃げ回った年で、現実と向き合わずに本ばかり読んでた。そういや村上春樹『ノルウェイの森』とかも実は今年初めて読んだりした。数日間感傷的になれたけど、そういう逃避的な読書やめたい。来年こそ頑張ろうな、来年もいい本と出会えますように。
うわー、もう少しで年が明けるわ。