Entrance Part2

だらだらダイアリー。心を解き放て

仮想通貨ドリーム!はコーヒーと共に

【今年最後の大セール】:Amazonサイバーマンデー最終日!!

f:id:kmartinis:20180131221117j:plain

喫茶店でネットビジネスの勧誘や胡散臭そうな面接が行われているのを、僕は何度となく人伝に聞いてきたし、実際にこの目で見てきた。しかし、まさか自分がーー正確には勧誘じゃないにしろーー友人から仮想通貨(しかもICO)の話を繰り出されるとは…。

〈この物語はあくまでフィクションです。。〉

 

はじまり

久しぶりに友人K(仮想通貨のKだと思ってくれればいい)に会って、その流れで帰り道を並んで歩いた。彼とは以前同じクラスだったことがあって、まぁ仲がいいと思ってる。最近彼から「浪人するんでしょ?浪人するなら慶應行かない?」とLINEが入っていて、その件についても「なぜ慶應ゴリ押しなのか」を聞きたかったのでとりあえず話を聞く。何気ない会話から、不意に最近何してるか、に繋がった。

 

「指定校は取ってあるんだけど最近割と忙しいんだよな…仮想通貨とか、あっ!しまった!」

そんなわかりやすい演出があるだろうか。僕は今クールのドラマを全て視聴しているのだけれど、今時そんなものはない。自信を持って言える。彼はいつの時代を生きているのか。そんな古風な「口走り」とトレンドの「仮想通貨」のコントラストに吹き出さずにはいられなかった。

「オーケーわかった、そこの喫茶店いこう」

 

喫茶店にて

正面に、一年ほど前の自分がいた。

目の前の僕は自信に満ちていて、周りの奴らがどれだけ幼稚か・イケてないかを凛とした表情で、こちらの僕に話してみせた。僕はこの一年で、鬱になり、その他諸々をへて今に至るが、彼は完全に以前の僕だった。彼は、意気揚々に語る。

 

「仮想通貨が」「リップルが」静かな店内にこれらの単語が元気に飛び交った。未成年の口座開設手続きが予想以上に面倒くさかったので現物を買うことはしなかったものの、僕もはてなに身を置くいちブロガーなので、ある程度の知識はたとえ望まずとも付いてしまったから、彼と会話できてしまうのは不思議ではない。

店主はどんな顔をしていただろうか。「ああ、またやってるよ…」あるいは「お、今度は仮想通貨かい?」なんて内心思っているんだろうな…。そう言うことを考えながら話を聞いた。

 

彼は、今の仮想通貨市場がいかにアツイかを教えてくれる。一応彼も「胡散臭く思うかもしれないけど」と予防線を張ってきたので、せっかくならその線に乗っかろうと「この一年で君は胡散臭さの塊みたいになったねえ」と冗談じみた口調で言っておいた。そんな折に、店内右奥のテレビから「ビットフライヤービットフライヤー♪みんなで歌おう♪ビットフライヤービット フライヤー♪」と流れてくる。ここで不覚にも吹いてしまった。今の市場のアツさが語られる喫茶店でTVCMが流れてしまう皮肉。ゾクゾクした。

 

俺心理学やってるからわかるんだよね

なんだかいろんなことを見抜かれた。この一年で僕がどう変化したのか、家庭環境がどうだとか、それが僕にどんな影響を与えただとか、色々と教わった。

えぇすごいなんでわかるの、というリアクションを取りながらそう言えば僕も中学生の時に「趣味が人間観察」の人に憧れて行動心理学、臨床心理学を始めとする本を読み漁っていたことを思い出した。臨床心理士の資格を中学生でとってやる!と豪語するも、受験資格すらないと言う事実にぶち当たって、それから心理学とは距離を置いている。

だからわかるぜ、君の会話術、コールドリィーディングって言うんだろ!なんて指摘はしない。ここは安っぽい推理ものの世界ではなく、少し煙草臭い現実世界の喫茶店なのだから。彼とはーー実に当たり前だがーー現実世界の繋がりを持ってる。友人とはそう言うものだ。

 

彼は「お前は天才肌だから色々勿体無いことをしてる」と言うから、「僕はこれから高い壺でも買わされるんですか?生憎手持ちが5000円もないです」と笑って返事をした。彼も続けて笑った。

彼は気づいているんだろうか。君には虚言癖がある。もう友人の間では有名な話で、一部から好奇の目で見られているらしいので、僕は彼の「一つの特性」くらいに留めておいている。以前、「バイナリーオプションで稼いでいる」と学校で話された時も僕は「前日にYouTubeの急上昇欄か何かにあがっていた特集の影響」であることを知っていたし、彼の胡散臭いイメージを、嘘が吹き飛ばすと言うなんとも不思議な事象が起こっていた。

 

セミナー、いっぱい行ってるってよ

「セミナー行くたびに、『高校生なのにすごいね君は』って褒められるんだよ」

彼はセミナーにたくさん足を運んでいるらしい。すごい。普通にすごいと思った。

 

実は彼のことをある程度尊敬していたりもする。今の僕が持っていない、かつての僕なら持っていたかもしれない何かを持ってる。高校生でいて、仮想通貨についてなんだか他人より詳しいのは僕も一緒なので胡散臭さは変わらないし、実際に投機を実践している彼のほうが一歩、いや二歩も三歩も進んでいると自覚している。所詮僕は“ボラティリティの大きさ”に怖じ気づいて市場へ参入できなかったイッパンジンなのだから。

 

だけど、ただ一つ気がかりな点があった。

「君に慶應を目指してほしい理由?メモ帳に書きながらの方がいいな」

そういって取り出した何の変哲も無いメモ帳。ペラペラとめくってみた。ゾクゾクが止まらなかった。笑いが抑えきれなかった。

「セミナー」「ICO」「上場までの予定」「儲かる!」

これらの情報が青ペンで隅々まで書き込みがされていた。ICO、なるほど。君、本当に僕と同じ高校生だよね?

 

僕の知る限りICOと言うのは限りなくマネーゲームに近い。彼は実際に開発者と話をしたことだとか、参加した後のことを希望いっぱいに話してみせたけれど、煽りに乗せられているように思えてならなかった。

少しエンジンかけすぎなんじゃあ無いのか。ICOにはこんなリスクがある。色々話したけど、「とりあえず3万」を引っ込めることはなかった。

 

僕が最も気がかりなのは、ーーその場では言えなかったのだがーーメモ帳の一片に「ホワイトペーパーが無い理由」とさらっと書き込みされているように見えたから。あの場の浮ついた空気では少なくとも冷静ではいられなかったから、見間違いの可能性もある。が、実際にホワイトペーパーが無いのなら格段に「詐欺」の二文字が現実味を帯びてくるじゃあ無いか。

 

その場で彼を咎めるには、あまりに知識が足らなすぎた。学校休んでる間、もう少し勉強しておけばよかったな。彼がトイレに行っている間、そう言う後悔をしていた。

 

大人になるってムズカシイ  

f:id:kmartinis:20180131221251j:plain

僕らの生きる現代には、危ないものがいくつも落ちている。

僕らはそうやって、“なんとなく怪しいもの”を幾度となく掻い潜りながら大人になっていく。きっとそうだ。だから、今回の件は僕を“大人への方向”へ引っ張った。彼はどうなる?彼も同様に、同じだけ大人へと近づけたんだろうか。…いや、そんなものは突き抜けて来年の今頃には億万長者になってるかもしれないな。ただ、彼にそのプロジェクトがどんな風に見えているのかは分からないが、少なくとも「詐欺かもしれない」と言う事実は知っていてほしい。それを願うばかりである。

僕が悲しかったのは、クラスでうまくいかないせいで心にぽっかり空いてしまった穴を、仮想通貨による優越感で満たそうとしているように見えたこと。ここに尽きる。人は弱ったタイミングこそ、気を張らなければいけない。どんな人であろうと、気の弱った時には平気で宗教にどっぷり浸かってしまったりするのだから。

 

ブレンドコーヒー代350円。滞在時間1時間弱。なんと濃密な時間だっただろう。新感覚エンターテイメント。ドキドキとワクワクと、哀しさが入り混じったカオスを過ごした。

彼とわかり合うには、あとコーヒー何杯分のお金が必要だろうか。時間が必要だろうか。さっぱりわからないし、分かり合えないかもしれない。いや、分かり合う必要はないな。彼は彼で僕は僕。僕がこの一年で失った情熱や勇気を彼は持っていて僕は持っていないだけ。少しばかり羨ましい気もしたけれど、今の僕が求める幸せとは少し違う場所にいた。

…もう少し話がしたい。慶應の話はほとんどできなかったけれど、そんなことはどうでもよくなった。もっと腹を割って話する必要がある。次会うときは、コーヒー一杯じゃ物足りないかもな。だけど、それは僕らがうまく大人になって行くために必要なものなのだ。きっと。

 

f:id:kmartinis:20181111191523j:plain